タイ山岳民族の現状

タイ北部に広がる標高500メートル〜1500メートルの山岳地帯には、アカ族、ラフ族、リス族、モン族、ヤオ族、カレン族など十数部族、約75万人の少数民族が生活しています。多くは中国南部やミャンマー、ラオスからここ1〜2世紀の間に移住してきた人々で、どの民族も独自の言語と高度な手芸技術による民族衣装をもち、焼畑農業にともなう数年〜十数年ごとの集落移動を繰り返しながら、伝統的な世界観と文化を保持してきました。
しかし、今、彼らの生活や文化が脅かされつつあるのです。
タイ政府による森林保護政策により、森林の伐採、焼畑が禁止され、定住を余儀なくされた彼らは、生活の基盤を根こそぎ失いつつあります。かつてのように肥沃な土地を求めて自由に移動することができず、かぎられた土地で連作を繰り返さなければなら ないため、地味のやせた山の傾斜地では収穫量が極端に低下し、収量を上げるには高価な肥料や危険な農薬に頼らざるをえなくなるのです。今では主食の米でさえ自給できなくなっている村も多く、人々は貧困にあえいでいます。かつて唯一の現金収入の手段だった違法のケシ(阿片)栽培は、近年厳しい取り締まりをうけ、逮捕者も続出しています。
一方でタイ経済の急速な発展と近代化の流れの中で、貨幣経済や物質文明への誘惑から、村の若い人々は現金収入を求めて労働者としてバンコクやチェンマイといった都会に流れて行きますが、タイ語の教育を受けていないことから不当な差別や低賃金で苛酷な労働に甘んじねばならず、若い女性たちの中にはことば巧みにだまされて売春組織に連れ去られるといった例もあります。
村は過疎化が進み、共同体意識は衰退し、農業に期待が持てなくなった男たちは阿片やヘロイン、覚醒剤などに手を出すようになり、村の中にも麻薬中毒者や覚醒剤の売買による逮捕者が急増しています。親がわずかばかりの借金のかたに娘を売春宿に売り渡し、帰ってきた娘がエイズに感染していたなどという悲劇は今でも枚挙にいとまがありません。

さくらプロジェクトとは
さくらプロジェクトでは、これら多くの問題を抱えるタイ山岳少数民族の社会の中でもとくにその犠牲になりがちな子供たちの教育を支援しています。
近年タイ政府は、タイ国内に定住をはたした山岳民族の人々をタイ国民として認め、受け入れていく方針をとっており、山奥の村にも小学校を作り、タイ語による教育を実施しています。しかし予算、人材、交通のアクセスの事情などにより、平地部の子供たちの教育環境と比較するとまだまだ不十分で、小学校すらない村、また校舎はあっても教員が不足している村が多数あります。タイでは中学3年までが義務教育期間ですが、ほとんどの山の村では通学可能な距離内に中学校はありません。山の子供たちにとっても、今後いやおうなしにタイ社会と関わりながら生活していく以上、最低限の学歴と知識は必要になってきます。しかし一家の所得が10000バーツ(日本円にして30000円程度) にも満たない家庭がほとんどという山岳民族の人たちにとって、町の学校に子供を寄宿させて勉強させるのはとうてい不可能で、義務教育とうたわれているにもかかわらず、小学校すら満足に卒業できないでいる子供も多数いるのが現状です。
さくらプロジェクトでは、1991年より、日本の皆様のご協力により、奨学金システムをつくり、山岳民族の子供たちの教育支援を行ってきました。現在、チェンライ市のナムラット村のユナイテッド・ビレッジ・スクールという私立の小中学校の敷地内に、すみれ館、ひまわり館、しらゆり館という3つの寄宿舎を運営し、147名の子供たちがここで共同生活をしながら最寄りの小中学校や高校、職業訓練所に通学しています。


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